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「レントゲンを見る限り骨に異常はないですね」

キラリンと反射するめがねをかけた、学校かかりつけ医の先生は表情がわからないのでちょっと冷たそうな雰囲気がある。



「捻挫を甘く見てはいけませんよ。固定してあるのでシャワーはokですが、入浴はさけて下さい」

『わかりました』

「ギプスを濡らさないように気をつけて下さいね。それではまた3日後に」

「柳生、ありがとな」

付き添いの桑原先生と待合室に出れば、そこには蓮二さんが。
どうやら仕事を抜けて来てくれたらしい。





「二ノ宮、悪いな」

『桑原先生は悪くないですよ。わたしがどんくさいだけです』

「世話をかけたな、ジャッカル」

ひょこひょこと蓮二さんのところまで行けば、優しく頭を撫でられた。


夏休みも終わってやっとプールの授業がなくなって。
今日はサッカーの授業1回目だった。
みんなでパスの練習をしたり、シュートの練習をしたり。
ちょっと助走をつけて右足でボールを蹴ろうとしたら見事空振りし転んだ拍子に足を捻ったという恥ずかしい失態だ。
あまりの痛さに立ち上がれなくて、桑原先生にいわゆるお姫様抱っこで保健室まで運んでもらい、桑原先生の車(黒のミニバンだった)でこの柳生外科クリニックに連れてきてもらったというわけだ。

お昼休憩の時間に入って30分くらい経ってるからか、待合室にはわたしたち以外誰もいない。




「柳君お久しぶりです」

診察室からでてきた柳生先生に右手をあげる蓮二さん。
いやまさか、そんな。




「柳君に似てしっかりしたお嬢さんに成長しましたね。目元なんかは面影があります」

「ああ、ゆずは姉さんに似て優しい目をしている」

ああ、このパターンは絶対そうだ。





『柳生先生もレギュラー・・・?』

「よくわかったな」

だって最近このパターン多くないですか?
でもまさか、蓮二さんの知り合いにお医者さんまでいたなんて。
教師に警察官に医者。
あれ、幸村さんのお仕事ってなに・・・?




「まだゆずが小さかった頃は熱を出すとよく柳生に見てもらったものだ」

『外科の先生なのに?』

「それはお友達ということでご愛嬌です」

にこり、冷たそうだと思った柳生先生が笑う。
笑うとちょっと仁王先生みたいだと思ったのは内緒だ。





「ほんとにゆずはそそっかしいな」

「心配かけてごめんなさい」

「ジャッカルは学校に戻るだろう?」

「ああ、お前たちはこのまま帰るだろう?」

「そうさせてもらう」

どうやらわたしの荷物はここに来る前に学校に取りに行ってくれたらしい。





『わー、蓮二さんの車だ』

いつもは電車だから蓮二さんの車に乗るのは久しぶりだ。
大きくて白いSUVを乗りこなす蓮二さんはすごくかっこいいと思う。
蓮二さんも普段は電車通勤してるから、家に帰って学校に寄ってって面倒だったに違いない。



『蓮二さんありがとう』

「当然のことだ」




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